ロクシタンのチェリーブロッサムソリッドパフューム

sachiko_deli2007-02-17

 今年は、もう東京には春が来ている。初雪も降らないのに、春一番が吹いて、すでに花粉が飛んでいる。といっても、まだまだ朝晩は寒く風は冷たい。しかし、確実に春を感じさせるアイテムが発売された。コスメ界には、「このシーズンになるとこれが出る」的な商品は結構多いと思うのだが(クリスマスキットも大きく言うとそうかもしれない)、ゲランの香水・チェリーブロッサムもここ数年の春の風物詩である。そのピンクの可愛らしい姿と香りで、毎年微妙なニュアンスチェンジをしながら、春を飾っている。

 桜というのは不思議な花だ。毎年、開花時期を細かに予想したり、花見に皆で行ったり、なぜだか気になってしまう花。日本で花と言えば桜、とはよく言われることだが、実は桜が日本人の心を奪ったのは平安時代になってから。それより前の奈良時代には、花と言えば梅だった。それが、桜にとって代わってから、桜は日本人にとって非常に重要な花となった。田植えの時期を知らせるとか、農業的な意味もあったそうだが、位の高い人にも低い人にも、等しく美しさを見せてくれる花なのである。

 あまり知られていないかもしれないが、一般的に現在桜と呼ばれているのはソメイヨシノ染井吉野)という桜で、実はこの種類は野生種などを交配して江戸の染井村というところで作られたたった1本の桜の木のクローンなのである。(非常に正確にいうと違うという説もある)。クローン羊などと昨今話題ではあるが、植物の世界ではもうずいぶん前からクローンの技術は行われているのである。したがって、ソメイヨシノの寿命はそうは長くなく、枯れるときは一気に枯れてしまうらしい。青森・弘前城付近の桜が危機的状況にある、というニュースを耳にした方も多いだろう。それはこのクローン桜ゆえの宿命でもあるのだ。

 日本という国は相当昔、特に江戸時代からは園芸大国であり、江戸のあちこちに植木屋があり、家の周りには花を植える庶民が多かった。世界のバラの品種改良も日本のハマナスバラ科)が多大に貢献している点も面白い。
 桜も当然、改良を重ねられて、その数は40〜800種類と数え方にもよるが相当種類があるそうだ。桜茶に使われる「開山」という種類や、鬱金桜という黄色い桜、御衣黄という緑の桜まであるという。その中で、一番有名な(全国の観光地の桜の8割がソメイヨシノ)のソメイヨシノにはなぜだか香りがない。葉より先に花が咲き、短い命を散らすその姿は今も変わらず愛でられているが、ソメイヨシノの香りというのは、ほとんど香りの成分がないらしい。
 というわけで、よく「桜の香り」という香水や入浴剤などは、なんとなくの桜のイメージか、桜餅の匂いになってしまう。実際、桜餅に使われる大島桜という種類の葉には、クマリンという成分がたくさん含まれている(塩漬けにするとこの成分が出てくるとか)。このクマリンという成分、実は香水にもよく使われているのだ。ちょっぴりパウダリーな香りだそうで、たしかに私は桜餅のあの香りがちょっとパウダリーに感じるので、この話を聞いて納得した。この成分は100年以上前、フランスのウビガンという会社が合成に成功し、香水に使われ、その後の「フゼアノート」という香調のベースとなった。
 冒頭でふれたゲランの春の看板香水、チェリーブロッサムにもクマリンが含まれているのかは知らないが、私はどうもこのゲランの香りが苦手である。お好きな方も多いので大変申し訳ないのだが、どうしても桜餅っぽく感じてしまい、しかも大の苦手なパウダリーさも感知してしまうのだ。ほかのブランド、たとえば、フラゴナール新宿伊勢丹などで販売)などにもたしか桜の香りというのはあった気がするし、和の小物でもなんでも、だいたい同じような香り…。いつも、少しだけ期待するのだが、たいてい私は桜餅を連想してしまう程度の感覚しかなく、本当にがっかりしてしまうのだ。
 そんなわけで最近は、桜の香りというものにはほとんど手を出さなくなっていた。そんな中、届いた一通のDM。ロクシタンからのものである。今年の限定フレグランスシリーズは、なんとチェリーブロッサムだという。あああ、なんてことだ…http://www.loccitane.co.jp/ロクシタンまで桜か。私は勝手によくある「桜の香り」だろうとパラパラとパンフレットを眺めていたのだが、中に小さなアルミパウチのサンプルが入っていた。おそるおそる開いてみると、あの例の「桜の香り」ではない!なんと懐かしい、やさしい香りなのだろう!即決。購入だ。トワレ、ボディシャンプーグロスなどいろいろあるが、もともとロクシタンのソリッドパフューム(練り香水)が大好きだし、一番安いし次の日には予約に走った。

 15日の発売日にうきうきしながらひきとってきたチェリーブロッサムの錬り香水は、見た目もすごくかわいい。香りは、そう、小さい時使っていたシャンプーのような、私にとってはどこかで嗅いだことのあるような、不思議と懐かしい香り。もちろんパウダリーっぽくない。桜餅の匂いでもない。というか、これが南仏生まれのロクシタンが提案する桜なのね、と感激した。さっき公式サイトを見ていたら、遠い昔の日につながるような香り、というようなものすごい長いポエムが書いてあったが(ちなみにこのシリーズをたくさん買うとポエムノートがもらえる。そんなものいらないよ…。)、遠い日の記憶、そんなイメージがぴったりの香り。持ちはあまりよくないけど、自分だけで楽しみたい、そんな気持ちになる香りである。大人の女性が可愛らしくつけるのもいいし、若い女の子が気軽につけるのも新鮮。その人なりの味が出そうな、悪く言えばよくある香りだけど、どこかほっとするのだ。
 私はすっかりこの香りのとりこ。手のひらにのせて、いつまでもそっと慈しみたい、そんな香りである。

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