日野本陣を見学して

日野本陣


 なんだか小学校の社会科見学みたいなタイトルになってしまった。

 先日、日野市立新選組ふるさと歴史館に行った時、日野本陣も近いというので、そちらも見学してきた。
 日野本陣といえば、土方の義兄・佐藤彦五郎さんの家である。新選組!ではもちろん、小日向文世さんが演じていてとってもよかった。もちろん奥さんは浅田美代子さん演じるのぶさんで、のぶさんが土方の実のお姉さん。もちろんこのくらいのことは、皆さん百もご承知だろうけど一応ね。

  本陣というのは、大名が参勤交代などの公務の際、途中で泊まる宿のようなもの。もちろんその地域の名士の家である。日野本陣は甲州街道沿いで、JR日野駅からちょっと歩いたところにある。さきほど訪れた新選組ふるさと歴史館からは歩いて10分もかからない。でも道が複雑なので歴史館の方に聞いてから行ったほうがいいかも。私と妹は地図や携帯のナビをを見つつ、なんとか無事到着したが、途中、とっても見晴らしのいいポイントがあった。高台から、日野一円を見渡せる一角。遠く山々も見える。この景色を試衛館の出稽古の時、みんな見ていた日野の姿だったのだろうか。家や人は変わったけど、この山の稜線はかわらならないのだろうなあ。またまたあの時代に思いを馳せた。

さて、日野本陣に到着。閉館間際だったせいもあり、人はまばら。ガイドさんをおつけしますか?と受付で言われたので、迷った末「大丈夫です。自分で見ます。」といったつもりだったが、なぜかおば様のガイドさんがついて私と妹を案内してくださった。彦五郎さんはとても洒落た人で、家の中の装飾にも非常に凝っていたという。
 私は実は古い建物フェチである。小金井公園にある「東京たてもの園」なんて大好き。(ここは、226事件の舞台になった家が移築されていたり、『千と千尋の神隠し』のモデルになったたてものがあるので有名。)日野本陣は、もちろん木造りで、昔の面影を残している。まず案内されたのが、家の大黒柱。ヒノキの太い一本の木から作った柱で、彦五郎さんがこだわったところだとか。台所の二の柱も1本の木から作った柱だそうだ。高いんだろうなあ。
 さて、次に通されたのが玄関のある間。今、マンションなどのドアに相手を覗く穴が開いているが、ああいう感じで、少し木戸に隙間があるそうだ。本陣ともなると、さすが防犯面もしっかりしている。その引き戸を開けると床にはひょうたんと胡桃の形に隅の方に彫ってある。お洒落だ。いいなあ、こういうの。この外に道場があって、総司や、山南さんも稽古をつけにきたとか。新選組の隊士の多くはこの地方の出身だったから、もちろん天然理心流が多い。後半に入った隊士もこの道場の人たちが多かったとか。

 さて、彦五郎さんの趣味がよかったというのを表す飾りがまたいくつか。
 お客様をお通しする部屋の釘隠し(鴨居のところにある銅の飾り)も、客間など公の人が通ってもいいのが、菊菱、その他は蝙蝠をかたどっている。現在、蝙蝠はあまりいいイメージはないが、中国では昔から大変縁起のいいものだというのは知っていたが、彦五郎さんの趣味や教養を感じさせる。

 そして次の部屋。ここが、明治天皇行幸の際にお泊りになった部屋とか。広くはないけど、すごく整然として綺麗な部屋だ。そしてその奥にある一番暗い部屋。ここが『新選組!!』に大いに関係する部屋。そう、あの最年少といわれる市村鉄之助がかくまわれていたという部屋だ。市村が函館から日野の佐藤家まで写真を運んだという話は有名だが、この部屋にたしか2年くらいかくまわれていたという。(写真は玄関のある間から市村がかくまわれていた部屋を通して撮ったもの。もちろんガイドさんが許可してくれたので撮影した。)鉄之助は、この部屋で旧幕府軍の敗戦を聞き、土方らの死を思ったのだろうか…。日もろくにささないこの部屋で…。彦五郎さん自身も新政府軍に追われ、いろいろ逃げ回ったというが、本当に戊辰戦争の後の旧幕府軍とその味方をした人々ははずっと命を狙われていたのだろうなあ。それがたった140年前の話。はあ、今からこんなに悲しいのでは、続編ではどんなに泣くだろうか。

そして廊下をはさんで、彦五郎さん宅の方々がプライベートで使う部屋へ。この部屋の釘隠しはウサギをかたどったものになっていた。「この部屋の釘隠しはウサギですね。」と私の方から言ったのだが、さすがガイドさん、よくご存知で、たぶん家族の温かみを表現したのであろうというお答えであった。そして、小さな4畳半くらいの間に続く。備え付けの箪笥がある。聞けば、この箪笥に土方歳三のお位牌が隠されていたという。実の弟のお位牌まで隠さなければならなかったなんて…。
ガイドさんが「のぶさんはここで針仕事なんかをなさってたんでしょうね。」とおっしゃる。南向きの庭が見える明るい部屋で、少しだけ前の人だったのぶさんがお針仕事をしている姿がパッと広がった。弟のお位牌を隠した部屋で、新政府軍に追われ逃げ回る夫を思い、弟の部下だった少年を匿う日々。のぶさんの思いがふっと横切った気がした。

日野本陣で公開されているのはだいたいこのあたりまで。お庭も立派だった。外にはグッズを売っている日野市観光協会のお店みたいなのがある。私はつい「道中手形」袋、という、一番組組長沖田総司という文字がたくさん書いてあるポーチみたいなのを買ってしまった。

ちょうど4時半となり、閉館。
次に源さんのご実家が近いというので、そちらも行ってみることにした。妹は以前訪れたことがあって、源さんのご家族らしき方々に非常に優しくk丁寧に説明してもらったとか。その日は休館日だったけど、外から蔵が見えるというので、行ってみることにした。

 しばし歩くとたしかに新選組!ののぼりがたくさんある一角に着いた。妹が「ここだよ。」というところを見上げると、「誠」の一文字が大きく書かれた蔵が見えた。妹によると、ここが源さんのご子孫にあたる方の御宅で、月に何回か博物館として開放してくださっているという。普段は本当に普通の住宅だ。
私がじっとその大きな蔵を見上げて感慨にふけっていると、なんだかお庭に水をまいているおじ様が……!妹が「あの方、源さんのご子孫だよ!」先日うかがったとき、とても親切に説明してくださったその方だそうだ。私は「少しだけ(外から)見せてください。」とお願いしてみた。遠くからだったから聞こえたかどうかはわからないが、とがめられることはなかった。源さんのご子孫にお声をかけてしまった上、外からとはいえ、蔵を眺めてしまったのは大変失礼だったと反省している。

その後、日野駅まではすぐ。今回は、新選組!ふるさと館、日野本陣、源さんのご子孫の御宅と、見せていただいたが、やはり新選組!の原点のひとつとしてこの地は訪れるべきである。
都心からはちょっと離れているが、新選組!ファンならぜひ足を運んでみて欲しい。