古代蓮の香り

sachiko_deli2007-07-24

古代ハスという植物をご存じだろうか。
少し昔(戦後すぐ)、東京大学の大賀博士(東大農学部教授,専:植物学)が、千葉県にある遺跡から発掘されたハスの種を、試行錯誤の末、開花させたという奇跡の花である。奇跡というのは、この種が約2000年前(弥生時代)のものであり、それが現代まで残り、見事その花を咲かせてくれたことだ。花は薄いピンク色。博士の姓をとり、大賀(おおが)ハスとして、現在は千葉市の花となっているそうだ。
私は小さい頃から科学もの、歴史ものなどの本が好きで(今もだが)、この大賀博士の話もその頃何かの本で読んだ記憶がある。ハスの花自体、幼い私は見ることもなく、しかもその記事が白黒ページだったため、想像するのみであったが、古代のロマンと科学の不思議を感じたものである。
 余談になるが、同じような話してメタセコイアがある。これはこの大賀ハスの発見より少し前、セコイアという種類の植物の化石が日本で発見され、それが中国にある水杉(スイサ)と同種と確認され、化石となった当時と変わらぬ種の植物として「生きた化石」と呼ばれている。現在は日本でもメタセコイアはよく見られる植物である(化石種とは違うという説もある)。

 さて、なぜ私がこんなにアカデミックな(?)話をしているかというと、今回ご紹介する香りのお話のバックグラウンドとして、ぜひ知っておいていただきたいからである。
 今年の春、東京大学資生堂の共同開発で生まれた「蓮香‐RENKA‐」(オードパルファム,30ml税抜2000円)が、東大グッズの一つとして発売された。東大の入学式で、新入生のお母様方を中心に200本以上売れたという。一部新聞などに載ったのでご存じの方も多いだろう。
 私がこの香りの存在を知ったのは東大にゆかりのある姉からである。蓮の香り、ロクシタンのソリッドパフュームのロータス(現在、日本では販売されていない)や、アユーラアユーラ | 負けない肌へ。エナジーオブアユーラアユーラ | 負けない肌へ。のラインのボディオイル(これについては以前ブログでも紹介したと思う)など、私は蓮の香りというとロマンを感じてつい買ってしまう。というか、花自体の香りは嗅いだことがないくせに、なんとなくイメージが良く買ってしまうのだ。ほんのり甘くて上品な香り。蓮の花の美しい花、またお釈迦様の花としても有名な蓮の、独特の気高い雰囲気が私の心をとらえるのである。
 姉によると、この「蓮香‐RENKA‐」はすごくいい香りで、しかも安価なので普段はフレグランスをつけない姉もつい買ってしまったのだという。私は、資生堂との共同開発(アユーラ資生堂系列である)、しかも蓮、ということで、きっと私の大好きなアユーラのオイルに似た香りだな、と直感し、私の分も買ってきてもらった。
 いよいよ、ご対面…まずは箱にやられた。巻物の絵画をひもとくように紙箱を開けていくと、そこは、古代蓮の美しい世界が描かれる。柔らかさ、気高さ、奥の深い花…このデザインはさすが資生堂。そして、瓶もまた美しい。すっとした円筒系のボトルなのだが、微妙に曲線を描き、手のひらにストンとはまる。ピンクと緑のグラデーションのなめらかさ。もうこのままうっとり眺めていたい…。派手な香水瓶もいいが、こうしたシンプルなものの放つ力を感じる(写真ではうまくとれてなくてごめんなさい)。
 香りの方は思った通り、アユーラのボディオイルに似ている。甘く、でもどこか水を感じさせるような、そして懐かしい香り。意外と持ちもいい。梅雨に入ってから、この香りを頻繁につけている。じめじめした雰囲気とは違う、しっとりした、露のような感触の香りがする。
 この香りは東京大学構内の東大グッズ売り場(東京都文京区)で販売されているが、電話すれば遠くでも注文できるようだ。東大といえば、江戸時代、百万石の加賀・前田藩の江戸藩邸があったところである。構内は私も何度か行ったことがあるが、やはり歴史を感じる。
 「蓮香‐RENKA‐」、パッケージ、香り、そしてフレグランスにとっては命ともいえる物語、すべてを背負ったこの品は、私のお気に入りに一品となった。